• ゆうゆう
日暮里保育園の想い

 日暮里保育園は、2019 年 4 月に荒川区から公園跡地(西日暮里 2 丁目北児童遊園・通称:お山公園)を貸与して頂き荒川区西日暮里 2 丁目に開園しました。この公園には、大きなケヤキ、桜を始めとする木々があり、地域の方々がお花見や防災訓練等で使用していた大事な憩いの場所でした。この公園から少し離れたところに旧荒川区立東日暮里保育園があり、その園舎の老朽化に伴い立て壊すことが決まり、園に通っていた子ども達が日暮里保育園に移行することになりました。
これまで通っていた保育園が無くなってしまうこと、地域の方々の憩いの場所が無くなってしまうことは、保育園に通っていた子ども達、保護者、そして地域の方々にとって大きな不安を招きました。
 日暮里保育園が開園する 1 年前より旧東日暮里保育園に保育の引継ぎを開始、保護者、荒川区保育課、社会福祉法人ゆうゆうの三者で毎月、話し合いを持ちました。その時間は、子ども達が安心して、日暮里保育園に通うために必要な時間でした。加えて、公立保育園として、その地に存在してきた 50 年の歴史を引き継ぐ覚悟を持たなければいけないと痛切に感じました。また地域の方々も、公園にあるケヤキや桜を始めとする木々を残し、環境の変化を最小限に留める園舎づくりを提案し受け入れて頂きました。
 保育園づくりは、その地域で築いてきた歴史を引き継ぐ作業であり、未来につなげる作業となりました。大きなケヤキと桜の木がある公園の起伏をそのまま生かした園庭は、子ども達を見守り、好奇心を掻き立てます。春は桜が咲き、夏は強い日差しを木々が和らげてくれ、秋は色づいた葉が舞い散り、冬は陽だまりが子ども達を温かく包み込みます。小鳥がさえずり、小さな生き物と出会い、水と土、自然物が子ども達の遊び道具です。園庭を囲む園舎は、どこで誰が何をしているか、人の気配を感じることができます。園舎は風が通り抜け、日差しが射し込み、季節ごとに窓から見える景色が変わります。
 この唯一無二の環境をどのように保育に活かすのか、それは、日暮里保育園で働く職員が、保育園に通う子ども達をはじめ、地域の方々にどのように責任を持つのかを問われています。
 社会福祉法人ゆうゆうは、日暮里保育園を含め、4 園の認可保育所、認定こども園を運営しています。どの園も園舎並びに園庭が、子ども達の五感を育み、豊かな生活を送ることができるように造られています。日暮里保育園は、定員 150 名という大きな集団ですが、2 階建ての園舎と身近に自然を感じられる起伏のある園庭を最大限生かし、子ども達が思う存分、活動できるよう、そして、這い這いから歩行の確立、自分の意思で身体をコントロールできるよう、小さい年齢からの系統的な身体づくりを目指しました。
 様々なことに興味、関心を抱き“やってみたい”ことを自分たちで成し遂げていくには、丈夫な体がなにより必要です。健康は、体だけでなく、情緒の安定をもたらします。人が食することは栄養を摂るだけでなく、心を豊かにする大切な営みです。人間の生活は、食することのために道具を作り、季節に応じた作業をすることを始め、地域の中で継続的に営まれ文化として根付いたことがたくさんあります。現代社会は高度な産業が生みだされ、人間の生活の中で、食することにまつわる時間が奪われてしました。小さな命を預かる保育園だからこそ、食することを中心に据え、多様な遊びを経験し、丈夫な身体をつくることを保育の目標にしたいと考え、日暮里保育園の 4 つの保育の特色として掲げています。
 この考えは、開園後、1 年目でコロナ禍に直面した時に確信づけられ、乳幼児期はいかに日々の活動の継続性が大切であるかを子ども達の実際の姿から知りました。今思うとコロナ禍での経験は、保育とは何か、自分たちの目指したいことは何かを検討し、これまであたり前だったことを再編成する機会であったと思います。そして、その経験から導き出されたことを開園 5 年目の現在、保育実践として自分たちの考えを明確にしていく作業を始めています。

 開園する前から、そして、開園後の現在に至るまで、多くの保護者、地域の方々、関係機関の方々が、日暮里保育園へ期待を寄せ、尽力して頂きました。2023 年 3 月で、送りだした卒園児の人数も 100 名を越えました。この地で、木の根が地に広がっていくように、地域の人々とつながり、支えられながら、未来を創る子どもたちを育てる土台づくりを日暮里保育園は担っていきたいと思います。そのためには、職員一人ひとりが想像性豊かに、日々の営みを大切に過ごし、真摯に子ども達と対峙し、自分自身の成長を同僚と共に喜び合える関係づくりを目指していきます。

園長 横井 美保子